その16 リサイタルをひらくということ①

私が初めて「リサイタル」なるものを行う経験をしたのは、高校2年生の時だったでしょうか。

千葉大学教育学部というところで、毎週水曜日に行われていた「水曜コンサート」というシリーズに、リサイタル出演させて頂きました。

高校生~留学する前までの数年間、「水曜コンサート」には何度も出演させていただきました。

リサイタルは、クラシック界では標準で1時間45分~2時間ほどです(途中休憩1回を含めて。楽器によっても少し変わりますが)。

それだけの時間、最初から最後まで自分ひとり(+共演ピアニスト)で弾き通すのは、体力も集中力はもちろん、聴く人を飽きさせない力量が必要です。

そのような経験を高校生の時からさせていただいたということは、今考えてもとても有り難かったことで、千葉大学の先生方には本当に感謝しています。

その後留学し、ロンドンの音楽大学に入学すると、そこでは、学生が自主的にリサイタルを企画して、学内でリサイタルをしてもよいことになっていました。宣伝も自分で行います。

ランチライムコンサートは約1時間なので気軽に開くことができます。私は毎年何かを企画していました。

そして大学の卒業試験は約1時間のリサイタル試験。公開試験なので、友人などを招くことができます。

その他イギリスでは、街の教会など色々な場所で、演奏する機会を提供してもらうことができました。

ここまでは、学生の立場で行ったリサイタル。入場料無料で聴いていただいたものです。

2004年に、私は初めてプロの演奏家として有料のリサイタルを行いました。「帰国リサイタル」であり、「デビューリサイタル」でもあります。

ところで、演奏家がリサイタルを行う場合、そのやり方には大きく分けて2通りのパターンがあります(これは私の場合で、メジャーな方々の場合は違うかもしれません)。

ひとつは自分で企画するもの。そこにスポンサーがつく場合もつかない場合もあり、お財布事情に関係してきますが、どちらにしても自分が主催、「自主リサイタル」です。

ふたつ目は、主催者が別にいて、「リサイタルをやってください」と依頼される場合です。依頼されるわけですから、主催者から出演料をいただけます。そして主催者の意向に沿ったものを演奏します(自由にやらせてくれる場合もあります)。

私の「帰国リサイタル」は、もちろん前者です。企画発案は自分で、会場の手配、共演者の手配、宣伝やチケット販売等、信頼できるマネジメント会社に依頼をして進めてもらいました。

集客は自分にかかってきます。家族で四方八方を尽くしてお客様にお声がけをして、色々な方にサポートをしていただき、実現しました。

そんな「自主」リサイタルをひらくことは、私達音楽家にとって大舞台であり、挑戦です。

2004年の帰国リサイタルの後は、初めは3年ごとに2007年、2010年、2013年と開催し、今年2015年は、2年ぶり第5回目となります。

その合間に、ソロ(無伴奏)の自主リサイタル『小林倫子 ソロ・ヴァイオリンの世界』も2回行いました。(ソロと、ソロでないリサイタルの違いについては、エッセイ「その15」をご覧ください)

始めに申し上げた通り、ひとつのコンサートを自分ひとりで(+共演ピアニストと共に)作り上げる作業は、時間とエネルギーの必要なことです。

学生のうちは、自分の演奏技術の向上だけを目指していればよく、一日のうち沢山の時間を練習に割くことが出来ましたが、社会人となれば、日々の仕事があります(生徒を教えることや、演奏のお仕事など)。

自主リサイタルは赤字になってしまうことも多いので、その分、日々の仕事をお休みする訳にはいきません。

リサイタルをするということは、どうやって自分の時間を作るかの戦いでもあります。

でも私は、リサイタルをすることは「力になっていく」と信じています。

音楽家として、人間として、教師として成長していくために。

そして、周りの沢山の方々と自分を繋ぐ絆を育てるために。

これからも細く長く、続けていきたいと思っています。

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