その9 イギリスの作曲家たち

皆さんは、イギリスの作曲家というと、誰を思い浮かべますか?

イギリスの歴代作曲家の中で、現代においても間違いなく、最も有名なうちの1人は、ヘンデル(Georg Frederic Handel, 1685-1759)でしょう。

え?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。私も昔は、ヘンデルはドイツ人だと思っていました(小学校ではそう習ったような)。

ヘンデルは、確かに現在のドイツ(当時はドイツという国がまだありませんでした)で生まれましたが、イギリスに移り住み、後に帰化してイギリス人となったのです。ヘンデルは、作曲家として優れていただけでなく、ビジネスも政治的にも「やり手」だったようで、地位と財産を築き、亡くなった時にはウェストミンスター寺院にお墓が作られました。近年ではウィリアム王子が結婚式を挙げた、あのウェストミンスター寺院ですから、ドイツの片田舎から出てきたヘンデルが、イギリスでどれほど成功したかがわかります。

ヘンデルは、バイオリン・ソナタを何曲か残しており、私も演奏します。

原曲はヴァイオリンと通奏低音(当時の演奏習慣)のために作曲されていますが、現代では、私達モダン・ヴァイオリン奏者は、ヴァイオリン+ピアノで演奏します。

モダン・ヴァイオリン?とか、通奏低音?とか・・・なに?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そちらに関しては別の項でお話したいと思います。

イギリスのお話に戻ります。

ヘンデルは、バロック時代(1600年代前半~1700年代半ば)に生きた人でした。ちなみに、バッハと同い年です。

イギリスには、ヘンデルの少し前に、パーセル(Henry Purcell)という作曲家もたいへん活躍し、その名は、ロンドン郊外にある名門音楽学校(9~18歳対象)、Purcell Schoolにも残っています。

さて、ヘンデルやバッハのバロック時代が終わると、音楽史では古典派の時代に入ります。

古典派の作曲家で最も有名な人は、モーツァルト(オーストリア出身)やベートーヴェン(ドイツ)でしょう。

その後、時代はロマン派へと移ってゆき、ブラームス(ドイツ)やショパン(ポーランド)、またはプッチーニ(イタリア)などが活躍しました。

・・・実は、イギリスではヘンデル以後のこの時代(古典派~ロマン派前期)、これと言って目立つ作曲家が出現しませんでした。

いえ、もちろん、作曲家が全くいなかった訳ではありませんが、現在でも曲が演奏されるような、しかもヴァイオリンの曲・・・となると、ほぼ見当たりません。

その時代イギリスでは、大陸(ヨーロッパ)の音楽を輸入して消費する(コンサートで楽しむ)ことには一生懸命でしたが、自国の音楽を顧みたり、自国の作曲家を育てたり・・・ということには目が向いていなかったようです。

そんな約100年間の「イギリス音楽低迷期」を経てやっと、1800年代後半に、イギリス人作曲家たちが顔を覗かせ、イギリス・ロマン派を開花させてゆくことになります。そしてそれが、近代・現代へと受け継がれてゆくのです。

イギリス・ロマン派以来の作曲家たちを少し挙げますと、パリー、スタンフォード、エルガー、ディーリアス、ヴォーン・ウィリアムス、ホルスト、ブリッジ、アイアランド、バックス、ハウエルズ、ウォルトン、ブリテン・・・。

おそらく、多くの方にとっては、聞き馴染みのない名前のほうが多いと思います。

2~3人知っていれば通でしょうか。(専門家は除きます)

このような知られざる作曲家たち、滅多に演奏されることがない作品たちの中にも、素敵な曲があります。私の自主リサイタルでは毎回、そんなイギリスの作品を、エピソードとともにご紹介しています。

イギリス・ロマン派は、一番「イギリスらしい」作品が生まれた時代でもあります。

一体、イギリスらしいとは何か。

聴いていただくと、きっとわかるような、わからないような・・・(笑)

・・・つづく。

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