その31 曲を仕上げるプロセスについて
ヴァイオリン演奏の上達に一番大切なことのひとつ、それは、「絶対的な基礎力」の向上だと、私は考えます。
ただ、その「基礎力」が発揮されるのは、「曲を弾く」という段階になってからです。基礎練習ばかりしていても、曲が弾けるようにならなければ、意味がありません。
では、「曲」は、どのように仕上げていけばよいのか・・・
そのイメージを持っていただくために、「曲を仕上げていくプロセス」を書き出してみました。
①譜読みをする
正しい音程と正しいリズムを把握し、なるべく正確に弾けるようにする。
この部分は、簡単に出来てしまう人もいますし、ここが一番の難関、と思う方もいるでしょう。
「難関」と感じる方は、「楽譜を読む力」が弱い可能性もあります。「楽譜を読む力」は、曲の上達を早めるうえで大変重要ですので、ぜひ一緒にトレーニングしましょう。
②一通り、音符とリズムが弾けるようになったら、曲の構成、スタイルを勉強しましょう。
曲の難易度が上がるほど、必要になり、重要になっていくのが、このプロセスです。
作曲家のことを知る、曲の背景を知る、曲の構成や特徴を見つけていく・・・
そうすると、どんな風に弾きたいかのイメージも膨らんできます。
(①と②は、順序が逆でもよいですし、同時進行も望ましいです)
③ひとつひとつのフレーズを、どう歌うか。
②をふまえて、複数のフレーズを、どう繋げていくか。
「音程とリズム」 の次の段階を、作っていきましょう。
まずは自分で考えてやってみる。上手くいかない、どうしたらよいか分からないところは、一緒に考えます。
「考える」ことが大切なので、私は、はじめから答えやアドヴァイスを言わず、こちらからは質問をすることが多いです。
客観的に聴いて、変なところをどんどん指摘。
何故「変」と感じるのか、なにが原因か、どう改善するべきか、分析していきます。
この段階で、動画撮影の宿題も出します。
動画を一緒に見ながら、改善点を提案します。
④弾き込みましょう!
曲は、弾けば弾くほど、手や体になじみ、自然と表現の幅も広がります。
⑤ゴール設定
最後に、試験やコンクール、発表会などがある場合はゴールが明確になりますが、
そうでない場合は、「なんとなく」次の曲へ移ることが多いですね。
「なんとなく」では納得しづらい、という場合は、最終動画撮影日等を設定し、時にはピアノ伴奏付きや有観客で、演奏を撮っておくと、記録にもなり、その後の参考としても活かせます。
⑥曲を仕上げるまでの期間について
生徒さんの能力や曲の難易度によって変わりますので、基本的には、師事している先生にお任せしていれば、ちょうど良い期間で仕上げられるように、計算されている筈です。
「○月に発表会があるから、そろそろ曲を決めましょう」
「○月のコンクールに出場したいなら、今から○ヶ月あるから、この曲が良いのでは?」
など。
一般的な例としては、小学校高学年以上で、ある程度の長さの協奏曲等を練習している場合、3ヶ月前後で仕上げることが多いでしょうか。
人によって、同時進行で複数曲を練習する人もいれば、一つの曲だけを練習する場合もあります。
どちらの場合でも、必ず覚えておいていただきたいのは、「曲だけを練習する」という期間は極力少ないほうが良い、ということです。
発表会やコンクール等の本番前になると、曲しかレッスンに持って来ない人が多いです。ある程度は仕方のない事ですが、極力、基礎練習をする時間を確保してほしいと思います。
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