その43 ヴァイオリニストの筋トレ④ 体幹の重要性
「小林倫子の筋トレ」シリーズ・・・
これまで、「リハビリ編」として、「チェストアップ」(胸を張る)、「ドローイン」について、お話をしてきました。
どちらも、大きな意味で「体幹」に関することです。
今回は、「体幹」がどれだけ重要か、ということを、私が個人的に体験したことをもとに、お話していきたいと思います。
「腕を太くしたい」
私は昔、極度に痩せていた時期があり、その頃は、手首などの前腕だけでなく上腕(二の腕)までも、見るからに細くなっていました。
故障が続いた後、身体の建て直しを始めた時、治療家兼トレーナーさんに
「(痛みが落ち着いたら)腕を太くしていきたいです」と伝えました。
痩せて、筋肉が減って、腕が弱くなってしまったから、故障が増えてしまった。→ 太く強くして、いくら弾いても痛みや故障が出ない腕にしたい、という考えです。
手指の筋肉は前腕にあるので、前腕を太く強くすれば、手指も強くなる。と、思っていました。
するとトレーナーさんは、
「腕の太く強くしたい、ということは分かりましたが、それはすぐには出来ません。
腕に筋肉を付けたら、腕が重くなります。身体の末端にある腕が重くなったら、体幹が耐えられません。
まずは、体幹です」
と、仰いました。
はい。
仰ることは理解しましたし、自分の体幹がどれだけ弱いかは一応分かっていましたので(体幹なんて、無いに等しかったよね)、納得はしましたが、
正直、「ふーん」という程度でした。
なぜ、腕を太くしたかったか
私が「腕を太くしたい」と言った理由・・・ひとつは、上記のように「故障しない腕になりたい」ですが、もうひとつ理由があります。
腕が太い方が、ヴァイオリンは、良い音がするのです。
同じ楽器を違う人が弾くと、全く違う音色がします。
体格の良いプロの人が、私の楽器を弾くと、私の楽器なのに、私が出したことのない音が、楽器から出てきます。
例えば、腕が太い人と細い人で、数値上は弦にかかる重さ(圧)が同じだったとしても、響きが違う、と、個人的には思います。
なので、もっと「ふくよかな響き」や「豊かな音色」「力強い音」・・・私の目指す「異次元の響き」を出すためには、腕を太くしたい、と思っていたわけです。
腕は、まだ太くなってないのに
その後、リハビリを経て、トレーニングを頑張って、ようやく「故障しやすい体」から脱しました。
たくさん練習しても疲れないようになり、以前弾けていた難しい曲も、再び弾けるようになり、さらに、以前よりも楽に弾けるようになってきました。
「え?上達してる!!すごい・・・」
そして確実に、前よりも力強い音、豊かな音も出せるようになっています。
え?
でも、まだ腕は「太く」はなっていないですよ?
まだまだ体幹トレーニングの初歩なので、腕のトレーニングなんてしていません。
でも、確実に、響きがよい!
なぜでしょうか・・・。
それこそ、体幹。
そう、「体幹」ですね。
体幹が安定していると、より速く、より力強く、そして楽に、腕や指を動かせます。
思えば、故障を気にし始めて以来、私の演奏からは「力強さ」というものが、どんどん減少していきました。そこで無理に強さを出そうとして、更なる故障に繋がっていました。
実際に、私が弾いているところをトレーナーさんにチェックしてもらったところ、「もちろん腕も使っているけれど、予想以上に体幹を使って弾いている」とのこと。
チェックしていただいて初めて、「あ、体幹って、こういう風に使うんだ?使ってるんだ・・・!?」と、自覚したのです。
腕じゃなかったのか!
「音」「響き」を良くするために効果的なのは、腕だけではなかったのです。
考えてみたら、腕が太い人は、体幹もガッシリしているのが普通ですよね。
私が、より「豊かな音色」を出すためには、全体の「体格」を育てなければならない。
腕を太くするなら、その分体幹も。まぁ要するに、どちらか片方で良いということは、無いのです。
腕 → 体幹 → 腕 → 体幹 → キリがありません。
もちろん脚も・・・です。(そもそも、脚でしっかり支えられないと、体幹や腕のトレーニングができない)
まぁ、トレーニングも、ヴァイオリンの練習も、勉強も。キリがない、奥が深いからこそ、やめられないのですね。
大人になっても、身体を育てる
現在、難しい曲やパワフルな曲を弾く際に、身体が今までになく安定していることを実感しています。
→ これまで(不調に陥って以来)、いかに「不安定」な中で必死に頑張っていたかがわかります。
自分の身体を育てれば、おのずと能力は上がる。
「まずは体幹から」と言われても、「体幹」って、いったいなに・・・?と、イメージが湧かなかった私ですが、今はその大切さを身に染みて感じます。
もう若くないし、無理は出来ない・・・なんて思うこともありますが、人間の身体は「何歳になっても育てられる」のではないでしょうか。
これからも、さら上を目指して。
ヴァイオリン上達のきっかけ
もちろん、体幹のみでは、ヴァイオリンは弾けません。
いくら身体を育てても、演奏する「技術」が足りなければ、最終的な上達には繋がりません。
技術の習得+身体全体を育てること、バランスよく向上していけるとよいですね。
そもそも、ヴァイオリン学習者には、運動が苦手な人が多いのではないかと思います。
でも、身体の動かし方の仕組みを知り、意識をして、上手く動かせるように練習していく・・・という点で、トレーニングとヴァイオリンの学習は、まったく同じです。
ヴァイオリンで伸び悩んだ時、頭を切り替えて、身体の動かし方を学んでみると、ヴァイオリンの技術のコツをつかめた・・・という事例は多々あります。
一緒に、体幹を考えてみませんか
「体の使い方の癖をチェックしたい」
「癖を直したい」
「もっと力強い音を出したい」
「音が弱いと、よく言われる」
「なにが原因か分からないけれど伸び悩んでいる」など・・・
普段習っている先生とは別の視点からの「セカンドオピニオン」が役に立つことがあります。
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※あくまでも、ヴァイオリニストの視点からのアドヴァイスとなり、トレーニングの専門家ではありませんのでご了承ください。
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