その56 「筋肉痛」のお話 ヴァイオリニストの筋トレ
皆さん、最近、筋肉痛になっていますか?
トレーニングや運動をしている方はともかく、お仕事に忙殺されて運動から遠ざかっている大人の方は、「最後に筋肉痛になったのはいつだったか・・・?」という方も多いのではないでしょうか??
私もそうでした。
以前、通っていた加圧トレーニングで、久しぶりに歩行困難になるほどの筋肉痛を体験。トレーニング自体はそれ以前にもしたことがあるのに、そこまで筋肉痛になったのは初めてだったので、トレーナーさんによって追い込み方が随分違うんだなぁ…と実感したのを覚えています。
でも、まだその頃は「筋肉痛とはなにか?」ということも、重要性についても、あまり考えていませんでした。
その後、肩こりラボでのリハビリ/トレーニングを経て、私の「筋肉痛」に対するイメージや考えは再構築されてまいりました。
今日は、そんな「筋肉痛」について、お話したいと思います。
筋肉痛になるのは、次の日? 2日後?
子供の頃は、運動会の次の日は全身筋肉痛になったのに、大人になると、筋肉痛が出るのが2日後や3日後になってきますよね?
それは何故でしょうか・・・?
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筋肉痛というのは、筋肉が、自分の持っている力の限りを出し切って(振り絞って)働いた時に、1~2日遅れて出るものです。
人間は、大人になると理性が働いてしまうので、「自分の筋力の100%を出し切る」という事が困難になっていきます。
力を出し切れば出し切るほど、筋肉痛はすぐに(翌日に)きます。子供の方が、無心にゴールに向かって走ったり、無心に力を出し切ることが得意なわけです。
筋肉にとっての「振り絞り度」が足りていないと、筋肉痛が、来るとしても遅れてくるようになります。
筋肉が眠っている
一方、大人には「久しぶりに運動をする」というシチュエーションになる機会が多々あります。
突然、駆け込み乗車をするために必死で走るとか(危険なのでやめましょう)、久しぶりに慣れない運動をするとか・・・そんな時、眠っている筋肉が久々に起こされて、突然力いっぱい使われると、筋肉痛になります。
普段動かしていない部分は筋肉痛になりやすい、ということです。
筋肉痛とはなにか?
筋肉痛は、なぜ起こるのでしょうか。
筋肉が酷使されると、筋繊維(細胞)に傷がつきます。
傷ついた筋繊維は自ら修復しようとしますが、その過程で炎症が起きることが、筋肉痛の痛みの原因だそうです。
傷ついた筋繊維に対して、そこできちんと栄養を摂ってあげると、回復するだけでなく、より丈夫に育ちます。以前よりも筋肉が肥大したり、力強くなって、筋力がアップするのです。
筋肉痛を追い求める?
筋トレをする際、筋肉痛が出るか出ないかは重要です。
筋肉痛になった場合は、トレーニングがバッチリ効いているということ。筋力アップや筋肥大の度合いが大きくなります。
筋肉痛が出ないということは、筋肥大の為であるなら、充分な負荷が与えられなかったということになります。
しかし決して、筋肉痛が出ないトレーニングはダメという訳ではありません。出なくても、きちんと効いている感覚があるかどうかの方が大事ですし、出なくても、筋肉は強くなります。それに、筋肉痛が良いかどうかはトレーニングの目的によります。
ある日、私が「腹筋を頑張っているのに筋肉痛が出ない(泣)」と言っていてら、友人に「筋肉痛って、出ないとダメなの?」と改めて聞かれましたが、
「ダメ」ではないです。
「どのくらい筋肉に負荷が与えられたか(筋肉をいじめられたか)」という、あくまでも「指標」になるのが筋肉痛です。
しかし、「意図して筋肉痛が出せるかどうか」は、自分の筋肉を自分の意思で追い込める=自分の身体を知り、コントロールが出来ている、ということになりますので、「トレーニングの上達」ということを考えると、できた方が良いのでしょう。
「意図して筋肉痛が出せるかどうか」→ 自分の身体、自分の筋肉と、対話が出来るようになる、という感じでしょうか。
トレーニングの各段階における、筋肉痛
さて、先ほど述べた2つ
「振り絞り度によって、筋肉痛の出方が違う」
「久しぶりに動かすと、筋肉痛になりやすい」
を踏まえて、では、
初心者がトレーニングを始めていくと、どういう事が起きるかをお話していきましょう。
初心者
(a) 初心者の場合、「初めて特定のエクササイズをやってみる」というシチュエーションでは、筋肉痛になりやすいです。
筋肉痛に「なったことが無いところ」に筋肉痛が出るので、「え?これって、本当に筋肉痛なの?」という程の痛みになることもありますし、なかなか治らないことも、あります。
とりあえずは、そこを乗り越えなくてはなりません。
(b)あるいは、もうひとつのパターンもあります。
その「該当する筋肉」を、それまで使ったことがないので、急には「うまく使えない」のです。その場合は筋肉痛にもなりません。「狙った筋肉を動かす」というのは結構難しいことです。
この場合は、練習を重ねるうちに段々と、該当筋肉を「動かせている」という実感が湧いてきます。
少し慣れてくると
(a)でも(b)でも、慣れてくると、その特定の筋肉さんも「使われる」ことに慣れてくるので、筋肉痛は出にくくなります。
「慣れてきたなぁ。使えるようになったんだな」と嬉しくなりますが、
次の段階として、その部位をさらに強化したいのであれば、再び筋肉痛を起こさせたいですよね。
でも、これがまた難しい。
例えば、腹筋を例にすると・・・
最初はきちんと「腹筋」を働かせられるのですが、疲れてくると、自然と他の部位(背中など)が助けに来てくれます。人間の身体はうまく出来ていて、ひとつの筋肉が疲れてきたら、自分でも気付かない間に、代わりに他の筋肉が頑張ってくれるのです。自覚としては「腹筋が疲れた」とも感じていないのに、です。
そうすると、「腹筋」をやっているのに背中が痛くなってくる、という現象が起きます。(私の場合特に)
そうすると、その後はいくら続けても、背中が痛くなるばかりで、腹筋には効いてきません。
腹筋に対して、筋肉痛を出すほどの「振り絞り」を行えなくなるのです。
腹筋が「振り絞れる」段階まで、「腹筋を働かせ続ける」ことが出来るかどうか。これが、次の壁になります。それが出来るまでは、腹筋に筋肉痛はきません。
腹筋がある程度の強さに育つこと、そして、意識的に腹筋を使い続けるスキル・・・などが必要になります。
やっと絞れた!
特定の筋肉で「振り絞る」ことが出来るようになると、筋トレのレベルが上がります。
でも、「毎回筋肉痛を出す」というのは、難しいのです。
何故なら・・・
同じエクササイズを続けていくと、筋肉は、その刺激に慣れていくので、ちょっとやそっとでは筋肉痛にならなくなっていくのです。強くなると耐性が出来るということです。
ですから、前回と同じ量・同じ負荷で運動をしても、筋肉痛が起きなくなっていきます。
それなら、量や負荷を増やせばよいかというと、それほど単純でもないのです。
運動量や負荷量は、そうそう増やし続けられるものでもありませんし、増やしたらキツくなりますから、また他の筋肉が助けに入ってくるかもしれません。体調や疲れ具合によって「振り絞り」が起こらないこともあります。
毎日の、自分の身体との対話が大切になってきます。
出たか出なかったか。
筋肉痛が出るかどうか、というのは、トレーニング中にはわかりません。
トレーニング中に筋肉が痛くなる → これは「即発性筋痛」
次の日以降に筋肉が痛くなる → こちらは「遅発性筋痛」
筋肥大や筋力アップにつながるのは、「遅発性」のほうです。
要するに、次の日以降にならないと、うまく筋肉痛が起こるかどうかは分からないのです!
トレーニング中にいくら「今日は良い感じ。絶対に明日は筋肉痛だ!」と思っても、結局は筋肉痛が起こらない、ということは良くあります(私はいつもですが、上級者でも、あるみたいです)。
「今日は充分にトレーニングが出来た」と思った体感と、実際に筋肉痛が出るかどうか、どのくらい出るか・・・に、誤差が無くなっていくということが、レベルアップへの道なのですね。
筋トレの目的は一つではない
「すべての人は筋トレをしたほうが良い」と、今、私は思っています。
(ここで言う「筋トレ」には、リハビリやエクササイズを含みます)
筋トレにも色々なレベル・種類がありますので、誰もがジムへ行く必要はないですが、
自分の身体の使い方を見直すと、身体の調子が良くなったり、仕事のパフォーマンスが上がったり、良いことが必ず起こるはず。
では、どんなエクササイズやトレーニングにも「筋肉痛」は必ず必要なのか?というと、そうではなく、目的や目標、部位にもよります。
筋肉痛が出るということは、筋繊維が傷ついているわけですから、微細な怪我をしているようなものです。筋肉にとっては「ダメージ」でもあります。ダメージを与えた方がよいのか、そんなに与えて良いのか、その人のトレーニングの目的や、身体のコンディションによるでしょう。
しかし、すでに述べた通り、「意図して筋肉痛を起こせる」ということは、自分の身体を把握し、コントロールをできる、ということになりますので、健康な人でしたら、出来たほうがよいのでは?と思います。
わたくしも日々、筋肉痛を求めて頑張っております。特に腹筋が課題です・・・。
「ヴァイオリニストの筋トレ」シリーズ
その39 ヴァイオリニストの筋トレ②(リハビリ編)チェストアップ
その42 ヴァイオリニストの筋トレ③(リハビリ編)ドローイン
その44 ヴァイオリニストの筋トレ⑤(リハビリ編)肩のインナーマッスル
その45 ヴァイオリニストの筋トレ⑥(リハビリ編)「股関節の謎」ヒップヒンジってなに?
その52 ヴァイオリニストの筋トレ⑦「スクワット」ができるまで
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